
2025年12月29日 16:15
やばい。
床に寝転がってから、時間の概念が消失した。
いや、床に「寝転がった」という表現は正確ではない。
「床に吸い込まれた」
「床と同化した」
「床になった」
そう、私はもう床だ。
…
きっかけは些細なことだった。
「ちょっと横になろう」
人類が発する、最も危険なフレーズの一つである。
ベッドまで歩く3メートルが、遠すぎた。
だから床を選んだ。
それが全ての始まり。
16:23
ゑゑ…
床は硬い。
でも、なぜか心地いい。
フローリングの冷たさが、頬に伝わる。
この感触。
ある種の啓示だ。
「人間は柔らかさだけを求めて生きているわけではない」
そんな哲学的な何かが、私の脳裏をよぎる。
いや、単に動く気力がないだけだ。
自分にツッコむ元気もない。
16:41
重力に完全敗北している。
起き上がろうと思えば起き上がれる。
たぶん。
きっと。
…無理だな。
腕が重い。
足も重い。
まぶたも重い。
全てが重力に支配されている。
ニュートンを恨む。
万有引力の法則なんて発見しなければよかったのに。
いや、発見しなくても重力は存在するのか。
やばい、思考が迷走している。
17:02
天井を見つめる。
白い。
何もない。
でも、何もないことが、今の私には丁度いい。
刺激がない。
情報がない。
何も考えなくていい。
これが現代人が求める究極の贅沢なのかもしれない。
…
さっきから「ねるねる…」という謎の呪文が聞こえる。
それ、私の声だ。
無意識に発している。
人間、極限まで脱力すると、謎の擬音を発するらしい。
新発見である。
17:19
スマホが遠い。
1メートル先にある。
でも取りに行けない。
なぜなら、それには「動く」という行為が必要だから。
今の私に「動く」という概念は存在しない。
私は静止している。
いや、違う。
私は「在る」だけだ。
存在しているだけ。
ただ、床の上に。
17:34
このまま夜を迎えるのか。
それとも奇跡的に動けるようになるのか。
未来は誰にも予測できない。
少なくとも、今の私には無理だ。
予測する気力すらない。
…
床って、意外と悪くない。
むしろ最高かもしれない。
人類はベッドを発明したけど、床という原点を忘れていたんじゃないか。
シンプル・イズ・ベスト。
床こそ至高。
そんな結論に至る。
ゑゑ…
17:51
あと5分だけ…
あと5分だけ床にいよう…
5分後には必ず動く。
…と、さっきから20回くらい言っている。
でも動けない。
これが私の限界だ。
床に生き、床に死す。
それが私の運命なのかもしれない。
夕飯の時間になったら、きっと誰かが起こしてくれる。
いや、一人暮らしだった。
詰んだ。
ゑゑ (´-ω-`)











